中小企業「価格引上げ(転嫁)を実現」5割(全国中小企業団体中央会)

全国中小企業団体中央会は、中小企業労働事情実態調査を、2024年7月1日時点での従業員規模300人以下の約40,000事業所を対象に実施し、その調査結果の中から「価格転嫁」「賃上げ」に関する概要を取りまとめました。

原材料費・人件費等の増加による販売・受注価格への転嫁状況については、「価格引上げ(転嫁)を実現した」割合は49.9%で、前年調査(49.5%)からほぼ横ばいで、従業員300人以下の中小企業における価格転嫁は前年と比較して進展しているとは言いがたい状況です。内容そしては「原材料費分の転嫁」が74.7%と最多でしたが、「人件費引上げ分の転嫁」(40.3%)が2年前と比べ16.6%増加しました。

一方で賃金の引上げは「労働力の確保・定着」を主な理由に2年連続して上昇しており、約60%が6月までに実施済み、7月以降の引上げ予定を含めると70%超です。改定内容は「定期昇給」(50%超)、改定決定要素は「労働力の確保・定着」(64%)が最多でした。加重平均賃上率は3.74%です。

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https://www.chuokai.or.jp/images/2024/09/20241001_R6roudougaiyou.pdf

最低賃金の上昇は今後も継続されると予想される中、中小企業を巡る経営環境は価格転嫁が十分なされていない中にあって一層厳しさが増してきているといえます。

賃金の上昇は、労働者の生活向上や所得格差の是正に重要な政策である一方、多くの中小企業にとっては深刻な課題です。特に労働集約型の産業では、賃金コストの増加が企業経営に直接影響し、利益を圧迫します。しかし、そのコストをすぐに価格へ転嫁することは、中小企業にとっては容易ではありません。取引先との交渉力の問題だけでなく、競争力の低下や顧客離れのリスクがあるため、価格転嫁の難しさに苦しむ中小企業が多いです。

価格転嫁の難しさを乗り越えつつ、最低賃金の上昇に対応するためには、複数の戦略を組み合わせた柔軟な対応が求められます。
対策としては以下のものが考えられます。
1.顧客が値上げを納得しやすくするために、提供する製品やサービスに独自の付加価値を加える
2.人件費の増加に対応するため、業務効率化やデジタル化を進め、内部のコストを削減する
3.賃金の引き上げに対応するための政府や自治体の補助金、助成金を積極的に活用する
4.取引先との交渉力を高める

これらの打開策を組み合わせることで、賃金の上昇と価格転嫁の問題に対処することが必要です。
政府の支援を適切に活用し、タイミングを見極めて価格転嫁を行うことが、企業の持続的な成長を支える鍵となるでしょう。

当事務所では、賃金上昇に伴う人件費増加や年収の壁で働き控えによる人材不足など、企業が抱える問題に対して解決策を提案しサポートいたします。お気軽にご相談ください。